飼い主「ずっとそばに」
ネットで普及、人気広がる
2008年9月20日~26日は動物愛護週間。ホテルや温泉、葬儀にお墓……とペット向けサービスが多彩になる中、「肖像画」にもじわじわ人気が広がっている。インターネットで手軽に申し込む手法が普及し、「そばにいてくれる温かさ」が実感できる絵を求める飼い主が増えた。
川崎市のマンション管理人、持田まゆ美さん(43)の家のリビングに1枚の水彩画が飾られている。黒柴(しば)のゴン君、シーズーの元気君、チビ君親子、プードルのアンナちゃんと、持田さんがともに過ごした犬が並んで額の中に納まる。アンナちゃん以外は死んでしまったが、「絵を見ると、みんながそこにいるような気持ちになる」という。
絵なら全員一緒
2000年、庭で飼っていたゴン君が死んだ。室内犬の元気君に比べ、一緒にいる時間が短かったと悔やんだ。残った写真も1匹だけで寂しそう。新しく家族になったチビ君、アンナちゃんとも一緒にしてあげたい……。2005年になって「絵なら全員一緒にできる」と思い立った。
ペットの絵を描くデザイナーや画家
ネットでペットの絵を描いてくれるデザイナーや画家を探し、北倉リュウさん(61)が営む「ペットアート王国」(http://www.lovely-art.com/)を見つけた。縦29センチ、横24センチの水彩画で1匹を描いて1万8千円。「この値段なら」とネット上で申し込んだ。数枚の写真を電子メールで送り、希望する構図などをメールでやり取りすると、約1週間で完成品が届いた。「背景にいろいろ写っている写真と違って、その子だけを描いてもらえるのがうれしい」と持田さん。
本業は印刷物などのデザイン
北倉さんは「対象を象徴的に浮かび上がらせる絵には、思い出を強くよみがえらせる力がある」と話す。当時、ペット画を始めたばかり。本業は印刷物などのデザインだが、芸術大学時代に学んだ絵の仕事にも挑戦してみたいと大好きな動物の絵を選んだ。これまでに約80点を描いた。犬が9割だが、亀やインコも。猫は意外に多くない。注文の半分以上はなくしたペットの絵で、プレゼントにする人も多いという。
作画は下書きに1日、色づけと背景に2日
毛並みは、流れる方向や波打つ様子に注意
作画は下書きに1日、色づけと背景に2日。個性を忠実に描くことに力を注ぐ。毛並みは、流れる方向や波打つ様子に注意して1本1本丁寧に描く。写真が不鮮明な時は別の写真を求めたり、同じ種類の動物の資料を集めて検証したりする。「動物はポーズをとってくれないので、ピントの合った良い写真が残っていない場合も多い。この点も本来の姿をそのまま描く肖像画が好まれる理由の1つ」と北倉さんはみている。
料金は約1万~数十万円
水彩、油彩、コンピューター・グラフィックス(CG)
ネットにはペット肖像画を引き受ける個人や会社のサイトが数多い。水彩、油彩、コンピューター・グラフィックス(CG)など様々で、料金も約1万~数十万円と幅広い。写真をもとにする手法が主流だ。
ペット大好き!
ペット総合情報サイト「ペット大好き!」(http://www.petoffice.co.jp/)の安保文子編集長は「肖像画は昔からあったが、2002年ごろから増えてきた」という。同サイトも2001年から受け付けている。「データのやり取りで商品化できる手軽さで、一気に広まったのではないか」とみる。
ペット・ポートレート
芸大や絵画教室
「ペット・ポートレート」(http://www.pet-p.com/)には24人の画家の絵が並ぶ。藤川武士社長(38)が大阪市周辺の芸大や絵画教室を訪ね歩き、2002年末、4人の画家で始めた。しばらくすると、画家の方から「描かせてほしい」との申し出が相次ぐようになったという。芸大を出た主婦やフィリピンの職業画家などが名前を連ねる。1万~2万円前後の値段は画家が自分で設定している。
感情移入
自らも大の犬好きという藤川さん。「飼い主の目で、この絵なら満足できるという人を採用する。ペットは家族の一員。温かみのある肖像画で、感情移入してほしい」